人は誰でも猛獣使い

2008年7月8日放送分『ベリキュー!』で、真野ちゃんが引用していた中島敦(小説家:1909-1942)のお言葉。
「人生は何事もなさぬにはあまりにも長いが、 何事かをなすにはあまりにも短い」


元ネタは、デビュー作『山月記』から。
以下、『山月記』のネタバレがあるので注意。


この『山月記』は、中国は唐の時代を舞台にした隴西の李徴という男にまつわるお話。
彼の身の上に起こったことを通じて、人間の性(さが)を映し出したりする作品(だと思ふ)。


例のお言葉は、李徴が旧友陳郡(ちんぐん)の袁サン*1一行に対し、自分が辿った運命について色々述べてる所から出ている。
↓から前後部分を引用しておく。
・図書カード:No.624 山月記青空文庫

(中略)
人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。
己(おれ)の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。
虎だったのだ。
これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。
今思えば、全く、己は、己の有(も)っていた僅(わず)かばかりの才能を空費して了った訳だ。
人生は何事をも為(な)さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄(ろう)しながら、事実は、才能の不足を暴露(ばくろ)するかも知れないとの卑怯(ひきょう)な危惧(きぐ)と、刻苦を厭(いと)う怠惰とが己の凡(すべ)てだったのだ。
(以下略)
実は、『山月記』を高校の国語教科書*2で知った記憶があるんだよな、俺。
これを授業で知った当時も、何気に心に残ってるんだよな。
李徴が身も心も虎に変わっていく様子を*3・・・。



ってか、まさか『ベリキュー!』を観ていて、高校時代に知った作品に再び会うとは全然思いもしなかったよ(苦笑)。

*1:にんべん+参

*2:現代文

*3:名前は忘れていたが